2004年をピークに、わが国の総人口は減少期に入った。緩やかな市場変化のなかで、2007年は建築確認不況、2009年にはリーマンショックが追い討ちをかけ、住宅需要は急激に収縮している。需要を支える若年層は雇用不安や所得減で購買意欲を失っている。
輸出から内需への転換が叫ばれ、定額給付金、エコポイント、最大といわれた住宅ローン減など大型経済対策がも実施されたが、需要はなかなか盛り上がらない。住宅業界も当面の出血を止めることに精一杯で、中長期の視点で事業を見直す余裕もなかった。
今年は、危機を乗り切ったあとに「あるべき姿、ありたい姿」について、少し腰を落ち着けて考える年にしたいものだ。ここまできたら、1~2年はリハビリ期間と考えるくらいの気持ちでいきたい。
恒例の新春レポートでは、そのような視点で、2009年を振り返り、今年の課題や展望についてまとめた。
1.補助金に依存した、他力本願経済から脱却前政権下は、事業規模で86兆円という莫大な経済対策がなされた。定額給付金、エコカー減税に補助金、省エネ家電に対する補助金など、一般会計を超えるお金を投入しても、「なければ、底割れしていた」という見方もあるが、生活者感覚からすれば、息がつけたという気もしない。デフレ経済が全て帳消しにしてしまった。
住宅業界に対しても、従来の耐震、バリアフリー、省エネリフォームに対する補助金や、大型住宅ローン減税などの優遇税制に加えて、太陽光発電や燃料電池エネファームの補助金が導入された。確かに、太陽光発電は以前の3倍以上の規模に拡大していることを考えると、自動車、家電、住宅も含めて補助金に支えられた年だったといえる。
需要の先食いという声もあり、これを契機に、自ら新しい市場を創造する成長戦略の取り組みが求められている。
バブル以降20年間、一貫して右肩下がりの経済の中で働いてきた30代や40代には、その成長戦略がイメージしにくい点があるように思われる。
このようなときにこそ、経営者はビジョンを語り、リーダーシップを発揮する責任がある。
2.生活者のトレンド スマート消費:安くなければ、おしゃれでない2009年のヒット商品番付(日経MJ)は横綱に「エコカー」と「激安ジーンズ」が並んだ。かたや環境配慮、こなた低価格の代表選手。財布と心、あるいは地球の負担を「軽」くして、少しでも生活を「快」く。アルコール分ゼロのビール風味飲料「フリー」や140字以内のプログ「ツイッター」など、ほかにも「軽さ」がキーワードの商品が上位陣に目立つ。不況の出口が見えない中で、消費者は生活の軽量化と快適さの両立を模索している。
2000年のヒット商品は「ユニクロ」と「平日半額のマクドナルド」だったし、2008年も「ユニクロ・H&M」と「トップバリュー(PB商品)」。住宅業界でも元気のよかったのは、タマホームやアキュラネットだけ。ゼロ年代(この10年間)は、低価格、デフレが消費の主役になった感がある。
節約もただ「安い」商品を選ぶのではなく、自分にあったファッションをネットで探す、口コミで情報収集する。お昼は外食をやめて自分でお弁当をつくって持参する若い男性社員も増えている。低価格を利用して節約を自分なりに楽しむことが、決して貧乏臭いイメージではなく、おしゃれなライフスタイルという価値観に変わってきた。
このようなシンプルリッチ、スマート消費はこれからも続くし、企業もこのような消費行動に焦点をあてたマーケテイングを展開する。
注目したい「新しい生活者」の現象をいくつか紹介する。
◆ 買わない、持たない、捨てない生活
「トヨタ3年分下さい」ではじまった残価設定型プランやカーシェア、家具付賃貸からシェアハウスまで、持つことの価値より、持つことのリスクが優先されるようになった。買えないから持たないのではなく、自分では買わずに、賢く借りたり、分けたりする消費のスタイルが浸透している。「地球にもやさしい」という大義名分も後押ししている。
また、節約から自分でつくる生活も拡がっている。
オーガニックの毛糸、電動バリカン、精米機、家庭菜園のタネ、弁当箱も売れた。「セルフで心はリッチに」ということらしい。
考えて見れば、ユニクロにしても、タマホームにしても成長企業の多くは、持たない経営を特長としている。今までの、「作って買ってもらうビジネス」から「買い取って、再利用、廃棄するビジネス」を考えないといけないのかもしれない。
そういえば、下取りビジネスもヒット商品に上がっている。
◆ 家族消費・すごもり消費・保温家族
不況で残業が減り、お父さんが早く帰ってくる。
家庭団欒の機会は増えた。テレビでクイズ番組を見て楽しむ、家庭用ゲーム機でバーチャルなスポーツ対戦で交流を深める。エコポイントや地デジ効果もあって大型薄型テレビは10月前年比1.7倍(金額では1.3倍)も売れ続いている。このほか、“巣ごもり商品”が好調という珍現象も起きている。炊飯器や電子レンジ、ホームベーカリー、マッサージソファーなどの販売が好調という。
ギスギスした厳しい時代に癒されるのは、やはり「家族」。不安な社会のなかで家庭を見直し大切にする風潮が強くなっている。社会の最小単位である家族の絆を強くし、支え合う家族像というイメージが共感を呼ぶ。しかし、一方では、自分の子供とどう接していいかわからないと、多くの親が悩んでいる。「モンスターベアレント」という言葉が生まれ、家族に関する暗いニュースが毎日のように伝えられる今、自治体や大学、企業で、「親学=家庭内教育」への取り組みが盛んになりつつある。
最近、亀井大臣の「親族殺人が増えている原因は大企業にある」という発言が物議をかもした。調べてみると2008年の親族間の殺人は558件、殺人事件全体(1120件)の49.8%を占め、10年前に比べて比率で10%、件数で70件増えている。老老介護の結果の痛ましい「殺人」も含まれるが、「家族」「親子関係」について改めて考えてみる必要がある。
「家族の再生」は、住宅関連産業に携わっているものにとって大きなテーマになる。
◆ インターネット消費が拡大
インターネット利用者は9000万人を越えた。(6歳以上人口の75%)である。ちなみに世界のインターネット人口は21億人、中国は1億4400万人でアメリカを抜いて世界1位になろうとしている。(通信利用動向調査2008経産省)
通販市場は、新型インフルエンザ流行による出控えで利用者が増えたことや、店頭よりも割安感のあるインターネット通販の伸びなどにより拡大を続けている。2008年度のネット通販市場は前年度比22%増の6兆2300億円。コンビニ(8兆円弱)、百貨店(7兆2000億円)の市場を上回る勢いである。JTBはリアル店舗からネットへのシフト、イトーヨーカドーはネットスーパー(注文して3時間以内に配達)に本格参入した。
ネットや携帯は、若年層だけでなく生活者の重要なコミュニケーションツールとして浸透している。
企業は、このいかにインフラを使いこなしていくか大きなテーマになっている。ただ、バーチャルだけでなく、リアルとの相乗効果を考えた展開が望まれる。
生活者は常に変化し続けている。
企業は、困難に直面したとき「答えは、顧客の中にしかない」ことを再確認し、顧客を理解する取り組みが必要になる。
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3.新設住宅着工戸数、2010年度は、回復しても80万戸台が確保できるか
■新設住宅着工戸数の動向
2009年度の住宅着工戸数は、11月までの公表結果から推測して、75万戸前後になると考えられる。9月までは危機的状況が続き危惧されたが、10月11月と二ヶ月連続で上昇している。持家需要がプラスに転じ、貸家需要もマイナス幅が小さくなった。但し、マンションは依然と厳しい状態。
新設住宅着工戸数が70万戸台に減少するのは、1964年(昭和36年)以来、45年ぶりで多くの住宅関係者にとっては初めての経験だ。
持家系需要は、雇用や所得の先行き不安から購入を手控え、若年層の融資チェックが厳格になったことも影響している。また、分譲系ではデベロッパーが在庫増加により新規着工を控えたことが原因だ。貸家需要は、派遣切りなどにより借り上げ社宅の解約があいつぎ空室が急増したことが原因である。
エリア別の着工動向を見ると、新設着工全体では、首都圏、中部、九州エリアの落ち込みが大きく、分譲マンション比率の高いエリアで苦戦している。
しかし、持家住宅で見ると、首都圏、近畿以西で健闘している。東京都は、47都道府県で唯一プラスになった。富裕層や建て替え需要に回復の兆しが出てきていると推測される。
反面、東北、北関東、北陸エリアは、厳しい状況となっている。
■2010年の見通し
2010年度は、政府予算で7兆円を超える経済対策が採られ、景気の底割れは回避されたとの見方が多い。住宅会社の受注傾向も上向いていることから、2010年度の新設着工戸数は、5%前後のプラスで80万戸前後は期待できる。
プラス要因として、住宅版エコポイント、子ども手当ての支給、農家の個別補償、高等学校無償化など家計への給付や、贈与税の1500万円まで非課税枠拡大など新税制効果に期待がかかる。また、上海万博など中国経済の成長も期待は持てる。
団塊世代も60歳から65歳に近づき、退職者も増加する。
親世帯と子ども世帯の連結家計ができる層は、住宅取得への気分は高まってくると考えられる。
長期優良住宅に対するフラット35の利子補給(1%の金利優遇)は、都市部を中心とした、建て替え住み替えに寄与するが、地方の一次取得層は厳しさが続きそうだ。
■中長期予測では、70~80万戸が続く
またシンクタンク日本総研の中長期的な予測では、若年層の減少から、持家と分譲を含めた持家系の需要は、2010年の58.2万戸から、2015年には55.1万戸、2020年には51.2万戸、2030年には44.3万戸と予測している。
貸家需要も高齢者向けやシェアハウスなど新しいビジネスモデルがあったとしても、50万戸以上になるとは考えにくく今後、100万戸を越えることはないといえる。
但し、ストックを増やすことなく、着工を増やすためには、建て替えの促進しかない。社会資本整備の観点から思い切った建て替え刺激策が取られれば可能はある。
4.住宅会社は、受注は上向いている大手住宅会社の2010年期中間決算は厳しいものになった。
主要10社平均で、売上は7.7%減少、営業利益は半減。売上高が前年比プラスになったのは、大東建託1社のみ。一括借り上げの家賃収入を売上に計上することで増えただけで建築請負業はマイナス10%である。
健闘したのは、大和ハウス、積水化学、旭化成ホームズ、反面厳しかったのは、三井ホーム、積水ハウス、ミサワホーム、レオパレス21である。
大和ハウスは、XEVOシリーズに環境配慮型の「FU(風)」を追加、ハイムは、「おひさまハイム」「あったかハイム」 こだわりキャンペーンを展開、太陽光電池の搭載率は77%になった。旭化成ホームズは、価格をおさえたスマートへーベルの投入、燃料電池と太陽光のダブル発電キャンペーン、また長期優良住宅制度に対応した「ロングライフプログラムのある家」と機敏な取り組みを行っている。
各社の受注動向では、秋以降上向いてきている。旭化成ホームズに次いで、積水ハウス、大和ハウスも水面下から顔を出している。
5.地域有力ビルダーにも破綻がひろがった■破綻有力ビルダーの拡大
2009年は、1月東新住建(名古屋市 負債491億円)、2月富士ハウス(浜松市 負債600億円)、3月アーバンエステート(埼玉県 負債50億円)、11月にはサンワホーム(山梨県 負債40億円)と穴吹工務店(高松市 負債1500億円)が破綻した。
2008年はマンションデベロッパーの破綻が主体、2009年は、建売り注文系ビルダーの破綻が目立った。ローコストを売りにする会社は、一次取得層の買い控えで売上げが激減、急速な全国展開、過大な広告投資や工場設備投資が負担になったようだ。
■住宅瑕疵担保責任履行法が10月から施行された。
2000年の基準法改正から始まった建築行政の最終工程である瑕疵担保履行法が施行され、多くの工務店が新築市場から撤退や建築リフォーム業へ業態転換が進んだ。新築市場でがんばる会社も保険会社や保証会社の選別で淘汰されている。
大手建材メーカーは、系列保証会社通じて保険加入に取り組み、技術力、管理能力のある工務店の囲い込みを図っている。
■長期優良住宅制度も導入された。
質の高いストックを形成し、長く、快適に使い、また中古住宅の流通を促進する長期優良住宅を増やす制度が本格化した。
長期優良住宅認定戸数は、6月から11月の累計で31,775戸(戸建31,465戸、共同310戸)となり、戸建て住宅だけで見ると、同期間の新築着工戸数の15%を占めている。
■長期優良住宅普及促進事業(補助金)
工務店を対象とした補助金制度も、8月から始まった。7,147社の工務店がエントリーし、12月28日時点で3,858戸が補助金申請を行っている。予定枠の5,000戸に満たないため2月末まで延長。住宅性能評価機関で技術的審査のうえ、適合書の交付を受け、市町村で認定を受けるなど申請業務の煩雑さがネックとなっている。
工務店を取り巻く環境は厳しさを増しているが、反面、技術力や施工管理力、経営管理能力がある工務店にとっては、他社との競争優位性を発揮し、シェアアップを図るビジネスチャンスと捉えることができる。